夕霧 その四十六

 御座所の奥の少しふくらんだところを引き上げてみると、なんと手紙がそこに挟んであった。うれしくてほっとしながらも馬鹿らしく思い、笑いをこみ上げさせながら手紙を読むと、そこにはああした気がかりなことが書かれていた。あまりの痛ましさに夕霧は胸もつぶれる思いで先夜のことを女二の宮との間に何かあったかのように聞いたのだと思うと、御息所が気の毒でたまらなく心が痛んだ。



「昨夜も御息所はどんなに心配なさりながら夜を明かされたことだろう。それに今日だって今までまだお返事さえ差し上げていないのだから」



 と言いようもない気持ちになった。


 手紙は見るからに苦しそうな、読むに堪えない、意味も分かりかねるような書きぶりなので、



「よほど思い余られた末でなければこんなお手紙はお書きにならなかっただろう。それなのに昨夜も音沙汰もないままにお明かしになって、どんなにかお恨みになられたことだろう」



 と思うと何もかも泣きたくなるほど悔やみ、今更に雲居の雁の仕打ちがとても恨めしくて腹立たしくてならない。どうしたあんな埒もないいたずらをして手紙を隠したのだろうか。いや、それも自分の日ごろのしつけが悪かったせいだと、あれもこれも自分を責めて何もかも情けない気持ちになるのだった。

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