夕霧 その四十二
雲居の雁はそれを聞かされて、とてもつややかに美しく笑って、
「あなたこそその見栄えとやらをこしらえようとなさるので、私のような古ぼけてしまった女はつらいのです。いやに若返って派手になってしまわれたあなたの変貌ぶりの激しさに、今ではそんなあなたを見たこともなかったので、とてもつらくてたまらないのです。こんなことなら前々から慣らしておいてくださればよかったのに」
と愚痴られるのもどこか可愛らしくて憎めない。
「突然私が変わったなど、私のどこを見て言われるのですか。まったくいやな邪推ばかりするのですね。ろくでもないことをあなたのお耳に入れる女房などがいるのでしょう。その人は昔から妙に私をよく思わないのです。やはりあの六位風情の緑の袖のことをいまだに憶えていて、この私を見下げる口実を作ってあなたを私から離反させようという魂胆でもあるのでしょう。いろいろと聞きづらい噂もちらほらと耳に入ります。それは何のかかわりもない人のためにもお気の毒なことで」
などと言ってみても結局は女二の宮とはどうせそうならずにはおかないと自身思っているので、強くは言い争いもしないのだった。
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