夕霧 その二十二

 夕霧はこれまでの長い年月、他の人とは違った情誼の深い男になりすましてあれこれ殊勝な心を見せ、親切を尽くしてきたのに、にわかにその名残もなく油断させておいて突然急変して好色らしい本性を見せたのがいかにも女二の宮に気の毒であったし、自分も気が引けるのでいい加減でなく考え直しながらもやはりこんなふうに女二の宮の言葉にばかりひたすら従っていたのではこれから先ますます冷淡にされ馬鹿を見るのではないかといろいろ思い悩みながら家路をたどる。


 その帰り道の草原一帯の露のしとどさにはすっかり濡れてしまったのだった。

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