鈴虫 その十五
お使いに盃を賜って、引き出物は二つとない立派なものだった。
冷泉院にいる人々の車を身分の順に列を直して前駆の者たちが大勢立て込んできて物静かだった管弦の遊びもどこへやら、打ち連れて六条の院を出発する。
光源氏の車に兵部卿の宮が同乗し、夕霧、左衛門の督、藤の宰相など、六条の院にいたすべての人々はみんな行った。光源氏たちは身軽な直衣姿だったので、それに下襲ぐらいを加えた。
月がやや高く上り、夜更けの空の風情も美しいのに興に誘われて、若い人々に道中軽く横笛を吹かせたりして、まったくお忍びの参上という様子だ。これがれっきとした公式の場合なら大げさでいかめしい儀式だった形式を整えてから二人の対面という運びなのだが、今夜はまた准太上天皇ではなく昔の臣下であったころの気持ちに戻って身軽にふっとこうした参上するので、冷泉院はとても驚き、喜んで迎えるのだった。
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