横笛 その二十五

 女三の宮の若君は臣下なので、ほかの宮たちと同列に扱うべきではないと光源氏は内心思っているが、かえってそんな気持ちを見せれば心に弱みを持っている女三の宮がどうひがむだろうと、これも例の生まれつきのやさしい性分から女三の宮を可愛そうに思い、この若君をもこの上なく大切に可愛がっている。


 夕霧はこの若君をまだよく見ていなかったと思って、若君が御簾の間から顔をのぞかせた時、桜の枝の枯れ落ちたのをとってみせながら招くと、若君は走ってきた。二藍の直衣だけを着て、色がとても白くてつやつやして可愛らしく器量も宮たちよりもきめ細かく、とてもきれいに整っていて、まるまると肉付きがよく気高く美しい。


 何となくそんな気で見るせいか、眼つきなどは少し亡き人よりはきつくて才気がありそうだけれど、目じりが切れ長ですっきりと美しく匂うようなところなどは非情に亡き柏木によく似ている。特に口元が晴れやかでにっこり笑った表情などはいきなり見たせいでそう思うのか、柏木に瓜二つに見える。光源氏もきっとそれに気づいているだろうと、糸井とその気持ちを探りたくなるのだった。

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