横笛
横笛 その一
柏木の亡き権大納言がはかなく亡くなった悲しさをいつまでも残念に思って諦められず、恋偲ぶ人々が多い。光源氏もさほど親しくない人でも世間から好ましい人物と認められている人が亡くなるのを惜しむ性質なので、まして柏木は朝夕に出入りして慣れ親しんでいた上、誰よりも目にかけていただけにどうしても許せないと思い出す一件はありながらも哀れに思うことは深く、何かの折につけて懐かしく思っている。
一周忌にも誦経のお布施など特別に多くする。何も知らない若君のあどけない表情の幼い姿を見るにつけてもさすがに不憫でたまらないので、人知れず心のうちに若君からの供養料として黄金百両をまた別に寄進するのだった。
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