柏木 その四十一

 若君がいかにも無心におしゃべりして笑っている目元や口つきの可愛らしさにもわけを知らない人はどう思うかわからないが、やはり自分では柏木に、実によく似ていると感じる。



「柏木の両親がせめて子供でも残しておいてくれたらと嘆いていられるそうだけれど、この子をお見せするわけにもいかない。人知れずはかない秘密の子だけをこの世に残して、あれほど気位高く老成して立派だった人なのに自分から身を滅ぼしてしまったことよ」



 と不憫で惜しまれるので、憎む気持ちも思い直して思わず泣くのだった。


 お祝いが終わって女房たちがそっと座を退いた間に光源氏は女三の宮の側に近寄り、



「この子をどうご覧になりますか。こんな可愛い人を見捨ててまで出家なさるほどのことがあったのでしょうか。ああ、本当にお情けない」



 と関心を呼び覚ますように言うと、女三の宮は顔を赤らめているのだった。

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