柏木 その二十六
夕霧は柏木の病気を深く悲しみ、始終お見舞いしている。今度の昇進はお祝いにも真っ先に駆け付けた。病室のある対の屋のあたりやこちらの御門の前にはお祝いとお見舞いに駆け付けた人々の馬や車が立て込んでいて、大勢の供人たちが騒がしくて混雑を極めている。
今年に入ってからは柏木はほとんど起き上がることもできないのだが、近衛の大将という重々しい身分の人に対して取り乱した不作法の姿のままお会いすることもできない。それでも会いたいと思いながらこのまま死んでいくのかと思うと、いかにも残念でならず、
「やはりどうぞこちらにお入りください。ひどく取り乱した病床の姿で、失礼の罪はお許しくださるかと思いまして」
と言って、加持の僧などはしばらく席を外させて、寝ている枕元に夕霧を通したのだった。
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