柏木 その五
父大臣は験のある行者を葛城山から招き迎えたのを待ち受けて加持祈祷をさせようとする。御修法、度胸などもとても仰々しく騒ぎ立てている。人々が勧めるままに様々な効験の高い聖者と言われるような修験者などのほとんど世間にも知られず深い山に籠って修行している者などまで弟君たちを各地にやっては探し出して招き寄せる。感じの悪い不愉快な山伏までも実に大勢来たのだった。
病人の容態はどこがどう悪いというわけではなく、ただ何となく心細い様子で声を洩らしてときどき泣くだけなのだ。
陰陽師などもほとんどの者が女の怨霊のしわざとばかり占っているので、そういうこともあるかもしれないと大臣は考える。ところが一向に物の怪が現れても来ないので思い悩んだあげく、こうした辺鄙な山の隅々まで修験者を探したのだった。
この葛城山から来た聖も背が高く険しい眼つきの男で荒々しく大仰な声をあげて陀羅尼を読む。病人の柏木は、
「ああ、何と憎らしい。私はよほど罪深い身なのだろうか、陀羅尼を大声で読まれるとたまらなく恐ろしくて、いよいよ死にそうな気がする」
と言って、そっと病床を抜け出してこの小侍従と会って話すのだった。
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