若菜 その三〇五
東北の町の花散里の御殿で柏木は夕霧が用意している楽人や舞人の当日の衣装のことなどについてさらに新しい意匠を加える。夕霧ができる限り見事に美しく用意していた上に柏木の細心な趣向が加わるとさらにいっそうよくなるのを見ても、柏木は音楽の道にかけてはまったく造詣の深い人でいるのだった。
今日はこうした試楽の日なので女君たちも見物するのに見栄えがするようにということで御賀の当日には証白橡の袍に葡萄染の下襲を着るはずだが、今日は青色の袍に蘇芳襲を着て、楽人三十人は白襲を着た。
東南のほうへ出てきながら仙遊霞という雅楽を演奏する。折から雪が少し花びらのように散り落ちるのは春がもう隣まで訪れているようで、梅の花がいかにも美しい風情でちらほらほころびかけている。
光源氏は廂の間の御簾の内にいるので、式部卿の宮、髭黒の右大臣だけが側に控えており、それより下位の上達部たちは簀子に居並んでいる。今日は気の張る御賀の当日ではないので、御馳走などもそう大げさでなく、簡素なものを出してあるのだった。
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