若菜 その二九一
「前世からの因縁などというものは目に見えないものなのだから、結婚なども親の思うようにはならない。それでも成人するまでの親の心遣いはやはりおろそかにできないでしょう。それにしても私はよくぞたくさんの子供を持たなかったものだ。おかげで子供のことで苦労しないですみ、本当によかったと思いますよ。まだ年が若かった頃は子供の少ないのは寂しい、女の子をあれこれ面倒見て育てられたらと嘆いた折々もあった。あなたも明石の女御の女一の宮をよく気をつけて養育してあげてください。明石の女御はまだものの分別が十分できない年頃に入内なさり、こうして里下がりもない宮仕えに明け暮れておいでだから、何かにつけ不十分な点も多いことでしょう。明石の女御の姫君たちにはやはり人に欠点を非難されることのないようにして、生涯平穏なお暮しをしていただきたいものだし、それに必要な心配のいらないだけの教養をそなえさせてあげたいものです。たいした家柄でもなく、それぞれに分相応な夫を持てる普通の身分の女は自然にその夫に助けられて無事に暮らしていけるものだけれど」
などと言うのだった。
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