若菜 その二四五
「お怒りになるのもごもっともなことですが、こうしたことは世間に例のないことでもありません。それなのに世に稀なほどにひどく冷たいお心をお見せになりますと、私は情けなさのあまりかえって自制心も失ってしまうかもしれません。せめて可哀そうとだけでもおっしゃってくだされば、そのお言葉をうかがって私は退出しましょう」
とあれこれとこまやかに言う。
想像していた限りでは女三の宮は威厳があり、馴れ馴れしく打ち解けて逢ったら気後れしそうな人と推量したので、柏木はただこんなにまで思いつめた恋心の片端だけでも訴えて聞いてもらえばかえってそれ以上の色めいた行為には及ばないでおこうと思っていた。しかし現実の女三の宮はそれほど気高く、気が引けて近寄りにくいというのではなく、やさしく可愛らしく、いかにもなよやなかに見える感じがこの上なく上品で美しく思われるのは誰に比べようもないのだった。
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