若菜 その一九一
髭黒の右大臣は以前よりも繁々と六条の院に参上して仕えている。今では北の方の玉鬘もすっかり落ち着いた先輩となったので、光源氏も昔のように恋愛めいた気持ちはさっぱり忘れたので、何かの折々につけてよく六条の院に見える。その折には紫の上にも会い、この上ない睦まじさで付き合っている。
女三の宮の一人が、昔と変わらず若々しくおっとりとしているのだった。
明石の女御については光源氏も今ではすっかり帝に任せきって、この女三の宮ばかりをとても心にかけていじらしく思い、まるで幼い娘ででもあるかのように大切にいたわり、お世話するのだった。朱雀院から、
「この頃は死期が今にも近づいたような気がして何となく心細いので、俗世のことは心にかけまいときっぱり決心して出家したのに、もう一度あなたに会いたいと切に願うのです。この未練が万一会えない恨みになって後生の障りになるのではないかと不安です。どうか大げさではなく、こっそりこちらにおいでくださらないか」
と、女三の宮に手紙を送るのだった。
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