若菜 その一八三
光源氏は昔のことを自然に思い出して、ひところ不運な境遇に沈淪した時節のこともまるでたった今のことのように感じられるのに、その当時のことを心置きなく語り合える人もここにはいないので、今では辞職した太政大臣を恋しく思いやる。奥に入って、
たれかまた心を知りて住吉の
神代を経たる松にこと問ふ
と畳紙に書いて尼君の乗っている第二の車にそっと届けた。それを見て、尼君は涙にむせぶ。
こうした光源氏の華やかに栄えた時世にあうにつけても、明石の浦でもうこれが最後と光源氏に別れをした時のことや、明石の女御がまだ明石の君のお腹にいた当時の有り様が思い出される。
それにつけても何というもったいない幸せすぎる居間の自分の運命だろうと感じ入るのだった。
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