若菜 その一七七

 東宮の生母の明石の女御はその後たくさんの子供を産み、いよいよ帝の寵愛は並ぶものもない。


 皇族出の人が引き続いて、后の位につきそうなのを、世間の人々が不服に思っているにつけても、冷泉院の后の秋好む中宮はこれという理由もないのに強いて后の位に自分をつかせてくれた光源氏の厚意を思うと、月日が経つにつれていっそう光源氏に限りなくありがたく感謝している。


 冷泉院はかねてからの希望通りにこれまでとは違って自由に御幸もしながら退位後のほうが本当に理想的な暮らしぶりでいる。


 新しい帝は女三の宮のことを格別心にかけて、なにくれとなく案じている。女三の宮は世間の人々の誰からも大切な人と尊敬されているが、紫の上の威勢には敵わない。年月が経つにつれて、光源氏と紫の上の間柄はますますこまやかに仲睦まじくなり、何の不満もなくいかにもしっくりとしているのだった。

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