若菜 その一七二
式部卿の宮家では、この婿君をまたとなく大切に世話する。
式部卿の宮は娘はたくさんいるが、そのためずいぶん苦労をかけられたことも多く、もう娘の世話はたくさんだと思っている。それでもやはり孫の真木柱のことだけは気掛かりで、捨てても置けない気がしている。
「真木柱の母君は、年とともにますます気がおかしくなっていかれるし、一方、父の髭黒の大将ときたら自分の言うことをきかないからといって、この姫を薄情に見捨ててしまわれたようなので、実に不憫でならない」
と言い、夫婦の部屋の飾りつけなども自身であれこれと監督して、万事にもったいないほど気を遣っている。
蛍兵部卿の宮は亡くなった前の北の方を年月が経つほど恋しく思い、亡き北の方と似た人と再婚したいと考えたのに、真木柱の姫君は不器量というわけではないが、亡き北の方とは全く感じが違っていると思ったので、残念だったのだろうか、通う様子がいかにも気が進まないようだ。それを見た祖父の宮は、何というひどい態度かと気に入らず嘆いている。母君も、あれほど気の変な人だが、正気に戻った時はやはり口惜しくて、つくづく情けない結婚だったなどとすっかり見限っているのだった。
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