若菜 その一六二

 三月の晦日の日には人々が大勢六条の院に参上した。柏木は何となく気が重くそわそわと落ち着かない気持ちだったが、女三の宮のいるあたりの花の色でも見れば気分も紛れようかと思ってやってくる。


 今年は宮中行事の弓の競射の催しが二月に予定されていたのが延びて、三月はまた帝の母后藤壺の尼宮の祥月にあたるので、また中止になり人々が残念に思っていた。ところが六条の院でこうしら催しがあると聞き伝えて、いつものように集まった。髭黒の大将と夕霧は、一人は養女玉鬘の君の婿君、もう一人は嫡男という特別の身内という間柄なので、中少将以下の人々も左右互いに競いあいながら参上した。今日は小弓の競射をと光源氏は言ったのだが、徒歩で弓を射る技に秀でた名手たちもいたので、呼び出して競射させる。


 殿上人たちも射手の務まる人々は皆、前後に互い違いに組み分けして勝負を争うのだった。

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