若菜 その一五九
「まあ、あなたはいやなことを言う人ね」
と女三の宮は無邪気に言って、小侍従のひろげた手紙を見る。
<見ずもあらず見もせぬ人の恋しくは>
と古歌が引いてあるところに目を止めて、あの思いもかけず御簾の裾が巻き上げられた時のことだと自然思い当るのだった。思わず顔が赤くなり、光源氏があれほど何かにつけていつも、
「夕霧に見られないようにしなさいよ。あなたは幼い無邪気なところがおありのようだから、ついうっかりして夕霧がお姿をお見かけするようなことがあるかもしれません」
と注意していたのを思い出した。夕霧があの日のことを、こんなことがありましたと、光源氏に話せばどんなに叱ることだろうと、人に見られてしまったことの重大さは考えず、まず光源氏に叱られることを怖がっている。その気持ちは本当に子供のような無邪気さなのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます