若菜 その一四七
寝殿の階段に面して咲いている桜の木陰に人々が寄って、花のことも忘れて蹴鞠に熱中しているのを光源氏も蛍兵部の宮も隅の高欄に出て見物する。
日頃の精進の手練れの技も披露され、蹴る回数が次第に多くなるにつれ、高官の人々も熱中しすぎて走り回り、冠の額際が少し弛んでいる。夕霧も身分を考えればいつにない羽目の外しようだと思うが、見た目には誰よりも一段と若々しく美しく見える。桜襲の直衣のやや柔らかくなったのに指貫の裾のほうが少し膨らんでいるのを心持ち引き上げている。それでいて軽々しくは見えない。なんとなく爽やかな気取らないその姿に、雪のように桜の花がふりかかる。夕霧はそれをちらと見上げてたわんだ枝を少し押し折り、階段の中段辺りに腰を掛けるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます