若菜 その一二三
燈火を近く取り寄せて明石の君がその手紙を見ると、あふれ出る涙はほんとうにせきとめるすべもないのだった。他人ならなんとも感じないようなことでも子としてはまず過ぎ去った昔のことが次々に思い出され、恋しくてならない。ついに再び父親には会わずに永久の別れになってしまったのかとその遺言を見ると悲しくてたまらず何とも言いようがない。
明石の君は涙をとめることもできない悲しみの中にも手紙の夢の話を一方では期待して末頼もしく思うのだった。
「父上の頑固で偏屈な心から私をとんでもない身分不相応な光源氏に縁付けて、思いもかけない不安な運命にさ迷わせると一時は父を恨み苦しんだこともあったけれど、それもこんな儚い夢をあてにして理想を高く持っていらっしゃったからだったのだ」
と初めて今理解できたのだった。
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