若菜 その一二二
この僧侶も子供の頃、明石の入道に従って京から下ってきた人で、今は老法師になって明石の浦に残っているので、明石の入道との別れをとても悲しみ、心細がっているのだった。釈尊の弟子の尊い聖でさえ、釈尊の御霊が永遠に霊鷲山にいると確かに信じながらも釈尊の涅槃の夜の悲しみは深かったのだから、まして尼君が明石の入道のことを聞いて限りなく悲しむのは当然だった。
明石の君は明石の女御のいる南の御殿にいたが、
「こういうお便りがありました」
と知らせたので、こっそり尼君のところへ来た。今では若宮の祖母として重々しく振舞っているので、よくよくのことがなければ尼君と行き来して会うことも難しいのだが、悲しい便りがあったと聞いて、気掛かりなので人目を忍んで来たのだ。見ると尼君はひどく悲しそうな様子だった。
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