若菜 その一〇四
光源氏の意向により、万事簡素にして大仰なことは今度のお祝いでは控えたが、帝、東宮、朱雀院、秋好む中宮をはじめ次々に縁者が最高の人ばかり堂々と揃っているので、その盛大さは筆舌に尽くすこともできない。その様子はやはりこうした場合にはこの上なくめでたく結構なことと思う。
光源氏の子息として夕霧ただ一人しかいないので、物足りなくて淋しい感じがするが、この夕霧は多くの人に抜きんでて世間の信望も格別によく、人柄も肩を並べる人がいないほど立派だ。あの生母の葵の上と伊勢に行った六条の御息所との確執が深く、光源氏との愛を争った当時の二人の威勢の結果が、それぞれの子供たちの今の身の上となって様々にこうした形で栄えているのだった。
その日の夕霧の衣装などはこちらの花散里が揃えた。禄の品々については大方三条の北の方雲居の雁が用意したようだ。
その折々につけての六条の院での催し事にも内輪の善美を尽くした支度も花散里はこれまでずっと自分には縁のない他人事のようにばかり過ごしてきた。どんなことがあってもこうした立派な人々との晴れがましい付き合いはまず無縁だろうと思っていたのに、夕霧との縁で今では幸せにも立派な重々しい扱いを受けているのだった。
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