若菜 その七十一
今はいよいよこれまでと女御、更衣などそれぞれに別れ、院を退出するにつけても悲しいことがいろいろと多いのだった。
朧月夜の尚侍は亡くなった弘徽殿の大后がいた二条の宮に住む。朱雀院は女三の宮のことを除いてはこの朧月夜のことだけに執着して、後ろ髪を引かれているのだった。
朧月夜は尼になってしまおうと考えていたが、
「こういう際に出家などするのはいかにも後を追うようであわただしい」
と朱雀院が止めたので、少しずつ出家の用意を始めている。
光源氏は朧月夜とは恋しく飽かない思いのまま別れてしまった人なので、その後も長い年月忘れられなくて、どういう機会に逢おうか、もう一度逢って過ぎ去った昔のことも話したいと思い続けてきたのだった。お互いに世間の聞こえも遠慮しなければならない身分だし、辛かったあの騒動などもつい思い出してくるにつけても、何ごとも慎んで控えてきたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます