若菜 その七十一

 今はいよいよこれまでと女御、更衣などそれぞれに別れ、院を退出するにつけても悲しいことがいろいろと多いのだった。


 朧月夜の尚侍は亡くなった弘徽殿の大后がいた二条の宮に住む。朱雀院は女三の宮のことを除いてはこの朧月夜のことだけに執着して、後ろ髪を引かれているのだった。


 朧月夜は尼になってしまおうと考えていたが、



「こういう際に出家などするのはいかにも後を追うようであわただしい」



 と朱雀院が止めたので、少しずつ出家の用意を始めている。


 光源氏は朧月夜とは恋しく飽かない思いのまま別れてしまった人なので、その後も長い年月忘れられなくて、どういう機会に逢おうか、もう一度逢って過ぎ去った昔のことも話したいと思い続けてきたのだった。お互いに世間の聞こえも遠慮しなければならない身分だし、辛かったあの騒動などもつい思い出してくるにつけても、何ごとも慎んで控えてきたのだ。

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