若菜 その五十三

 三日の間は舅の朱雀院からも主人の光源氏側からも、またとはないような盛大で優雅な催しを尽くされた。紫の上も何かにつけて平静でいられない夫婦の有り様だ。それはまあ、こんなことになってもすっかり女三の宮に負けて、ないがしろにされてしまうようなこともないだろうと思う。それでもこれまでは競争相手のない暮らしに馴れていたのに、これからは前途も長く、華やかな人が侮りがたい威勢で輿入れしてきたのだから、紫の上は何となく居心地の悪い思いをするのだった。それでも表面はひたすらさり気ない態度を装って、女三の宮の降嫁の折も光源氏と心を合わせてこまごまとしたことまでよくお世話したり、いかにもいじらしい態度だった。光源氏もそれをいっそう世にまたとない殊勝な心掛けだと思うのだった。

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