若菜 その四十七

 紫の上の父君の式部卿の宮は、玉鬘の君が主催の祝宴には例の髭黒の大将の北の方とのいざこざがあって、行きにくいと思っていた。それでも招待があったのに、こんな親しい間柄で欠席するのは含むことでもあるようにとられるのも具合が悪く、日が高くなってから来たのだった。


 髭黒の大将が得意顔をして光源氏の婿の立場で、今日の祝宴の一切を取り仕切っているのも、式部卿の宮としてはいかにも腹立たしいことなのだが、髭黒の大将側に引き取られている孫の若君たちは、どちらにしても縁つづきなので、まめまめしく席上の用に立ち働いている。


 籠づめの菓子につけられた枝が四十、料理の入った折櫃四十を、夕霧をはじめとしてこれといった縁故の人々が皆、順々に手送りして献上する。その後盃が廻り、若菜の吸い物を食べた。光源氏の前には沈香木の足つき膳が四つに、食器類も優美で現代風に整えられているのだった。

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