若菜 その四十六

 光源氏は、



「だんだん年をとることも自分ではそれほど気にかからず、相変わらず昔のままの若々しい気分を改めることもないのを、こんな小さい孫たちを見せてもらうと、何だか気恥ずかしいほど、自分の年を痛感させられる時もあるのですね。夕霧の中納言がもういつの間にか子供ができたらしいのに、大層ぶってよそよそしくして、まだ見せてくれないのですよ。誰よりも先に私の年を数え上げて祝ってくださった今日の子の日は、やはり私には情けない気がします。まだしばらくは老いを忘れてもいられただろうに」



 と言う。


 玉鬘もとても美しい女の盛りを迎え、貫禄さえさし添って、見るからに立派になっていた。




 若葉さす野辺の小松を引き連れて

 もとの岩根を祈る今日かな




 とつとめて人の親らしく大人びて挨拶する。

 沈の香木の折敷四つに、若菜を盛って形ばかり召しあがる。光源氏も盃を取って、




 小松原末のよはひに引かれてや

 野辺の若菜も年をつむべき




 など、詠み交わしているうちに、上達部たちが大勢南の廂の間に着席するのだった。

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