若菜 その三十一

 朱雀院は気分がとても苦しいのを辛抱しながら無理をしてこの裳着の儀式を無事にすませた。


 その三日後に決心して、ついに落飾した。普通の身分のものでさえ、いよいよ出家して剃髪するとなればまわりは悲しいものだが、まして朱雀院の場合は、ひとしおいたわしく、妃の人々もどうしようもなく悲しみにくれている。


 中でも朧月夜の尚侍は側にぴったりと付き従って離れず、ひたすら悲しみに沈んでいるのを、朱雀院は慰めかねていた。



「子を思う親心にはまだ限度があったのですね。あなたが今こんなに深く悲しんでいるのを見ると、あなたへと愛執が断ち難くて別れるのが限りなく辛くてならない」



 と言って、出離のここrも乱れそうになるのを、無理に耐えて脇息に寄り掛かっているのだった。

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