若菜 その十三

 乳母は、



「夕霧の中納言は、もともととても生真面目な人で、長年太政大臣の雲居の雁の姫君に想いを寄せて、他の人には見向きもなさらなかったのですが、その恋が叶ってご結婚なさいましてからは、いっそうお心を動かうことはなかろうと思われます。それよりも父の光源氏様のほうがかえって今でも何かにつけて女性に興味をお抱きになるお心が絶えてないようにお見受けします。とりわけ、高貴の御身分の姫君をお需めになるお気持ちが深くて、朝顔の前斎院などを今でもお忘れになれなくて、何かとお手紙などさし上げていらっしゃるそうでございます」



 と言う。



「いや、その相変わらずの浮気っぽいご性質こそ、どうも気掛かりだけれど」



 と、朱雀院は言うものの、いかにも大勢の女君たちの間に仲間入りして辛い思いをさせられ、心外なことがあるとしても、やはりこのまま親代わりということにして、乳母たちの言うように光源氏に女三の宮を預けることにしようかなどと考えるのだろう。

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