若菜 その三
東宮は朱雀院がそうした病気の上に出家の考えまであると聞いて、院の御所へ行啓した。
母君の承香殿の女御も付き添いで来た。この人は格別の寵愛を受けたわけではないが、東宮がこうして生まれたのはやはりこの上もなく結構な宿縁なので、朱雀院もこれまでの長い年月の積もる話をこまやかに交わしている。
東宮にも国を治める心得など、万事につけてこまごま教えるのだった。東宮は年の割にはとてもしっかりと大人びて、後見の人々も申し分なく立派な名門ばかりなので、朱雀院はその点についてはすっかり安心しているだった。
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