藤裏葉 その三十

 入内の儀式は人目を驚かすような仰々しいことはすまいと光源氏は万事控えめにするが、それでも自然に世間並みには収まらない。


 紫の上は明石の姫君をこの上もなく大切にお世話して、心の底から可愛いと思うにつけても、誰にも渡したくなくて、これが実の子でこうした晴れがましいことがあったならどんなにいいだろうと思うのだった。光源氏も夕霧も、明石の姫君がただ紫の上の実の子ではないことだけが残念なことだと思った。


 紫の上は宮中で三日過ごしてから退出する。


 入れ替わりに明石の君が参内するので、その夜、紫の上と初めて対面した。紫の上は、



「明石の姫君がこのように成人なさいましたのを見るにつけても、あなたとの長いご縁がしのばれますので、もう他人行儀な遠慮はお互いになくなるでしょうね」



 と、さも親しそうに言い、いろいろと世間話などをした。これも二人が打ち解ける糸口になったことだろう。

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