藤裏葉 その十二
「あなたはこの末世にはもったいないくらいの天下の識者でいらっしゃるのに、私のような年寄りをお見捨てになるのは薄情すぎますよ。昔の書物にも、『家礼』といって、他人でも親子のように礼をなすと書かれているではありませんか。そうした聖賢の教えもよくご存知のはずなのに、ずいぶん私をお苦しめなさるものだとお恨みしたいのです」
などと言って、酔い泣きというのか、いかにも上手に意中をほのめかすのだった。夕霧は、
「どうしてそんなことがございましょう。亡き方々を思い出すそのお身代わりのお方と存じまして、身を捨ててもお仕えしたいと、心から思っておりますのに、何と考えになって、そんなふうにおっしゃるのでしょうか。これもひとえに私の心の怠慢のせいなのでしょう」
とお詫びを言うのだった。
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