真木柱 その五十三
髭黒の大将は今夜このまま玉鬘を自分の邸に引き取るつもりだったが、前もってお願いしたのでは許しが出そうもないので、その日になっていきなり、
「私は急にひどい風邪をひいて病状が重くなりましたので、気楽な自邸で静養しようと思いますが、その間、夫婦が離れていてはとても気掛かりなものですから」
と、おだやかに言い訳を作り、そのまま玉鬘をさっさと邸に引き取ったのだった。
父内大臣は突然のことなのでこうした儀式もしない引き上げ方は略儀すぎでどうかと思ったが、強いてその程度のことに文句をつけて邪魔をするのも髭黒の大将が気を悪くするだけだと考えたので、
「どうともよろしいように。もともと私の自由にはならない人のことですから」
と返事をする。
光源氏はまったく突然のことで不本意に思ったが、どうなるものでもなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます