真木柱 その十五
日頃、召人と呼ばれている手つきの女房で、親しく髭黒の大将に仕えている木工の君や、中将のおもとなどという人々でさえ、それぞれの身分なりに、髭黒の大将のこの頃の態度に、心穏やかではなく、あんまりだと恨んでいる。まして北の方はたまたま正気を取り戻しているときなので、側についてあげたいようないじらしい感じで、泣き沈んでいた。
「私のことを、ボケているとか、気がふれているようだとか、軽蔑してののしられるのは、ごもっともなことでしょう。でも父宮のことまで引き合いに出してあれこれ非難なさるのを、もし父宮がお耳にされたら、とても気の毒なことです。不運なこんな私を娘に持たれたばかりに、父宮まで軽々しく見られるのはたまりません。あなたの父に対する悪口はもう聞きなれていますから、今更私はなんとも思いませんけれど」
と、横を向いて拗ねている姿はとてもいじらしかった。元々小柄な人が、日ごろの病気でやせ衰え、いっそう弱弱しそうに見える。髪はとても美しくて豊かで長かったのに、今は分け取ったように抜け落ちて少なくなり、櫛もほとんど入れないので、涙に髪がもつれてべったりとからみついているのは、ほんとうに痛々しかった。
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