真木柱 その十四
玉を磨き立てたようなきらびやかな玉鬘の部屋を見慣れた髭黒の大将の目には、見るに堪えないが、長年連れ添った愛情は急に変わるものではないから、心の中ではほんとうに可哀そうだとつくづく思っている。
「昨日今日結婚した、ほんの浅い夫婦仲でさえ、相応な身分の人たちになれば、皆お互いに辛抱しあってこそ、添い遂げるのですよ。あなたはほんとうにお体も苦しそうにしていらっしゃるから、言いたいことも言い難いのです。長い年月お約束してきたではありませんか。普通の人と変わった病気のあなたを、最後までお見捨てせずに添い遂げようと。今までずいぶんとこらえて過ごしてきたのに、あなたは私のようにはとても辛抱しきれないというお考えから、別れようなどと見捨てられるのですね。幼い子供たちもいることですし、何があろうとあなたを生涯粗末にはしないと、前からずっと言い続けているのに、取り乱した女心から、あなたはこんなに恨み続けていらっしゃる。一通り、事が落ち着いて、それをすっかり見届けないうちは、お恨みになるのも、もっともなことでしょうが、ここは私に任せて、もうしばらくの間、我慢して結果を見届けてください。父宮が噂をお聞きになり、私をお恨みになられて、思い切りよくさっさとあなたをお引き取りになろうとお考えになって、別れさせようとおっしゃるのは、かえって実に軽はずみなことです。本気でそうお考えになっていらっしゃるのかな。それとも、ちょっと私を懲らしめてやろうというお考えなのだろうか」
と笑いながら言うのだった。それが北の方には、いかにもいまいましく、腹にすえかねて、いっそう心を傷つけられた感じだ。
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