真木柱 その十三

 北の方の父式部卿の宮がこのことの次第を聞いて、



「今となっては、そんな現代風な新しい女を迎い入れてちやほやしている邸の片隅に、不体裁にすがりつき同居なさるのも、外聞の悪いことだろう。私の生きている限りは、世間の笑いものにされてまで、おとなしく夫の言いなりにならなくても過ごしていかれましょう」



 と言い、御殿の東の対をきれいに整えて、北の方を移そうと考え、そのようにと勧めるのだった。北の方は、



「親の側とはいえ、いったん結婚して人の妻となった身で、今更夫に捨てられ、おめおめ実家に出戻って、父宮にお顔を合わすのは」



 と思い悩んでいるうちに、ますます気分も狂おしくなって、ずっと病床についているのだった。


 この人は生まれつき物静かで性質がよく、子供のようにおっとりと無邪気な人なのだが、時折、物の怪のために正気を失い、人に嫌われても仕方のないような振舞いをするのだった。部屋などもひどく乱雑で、美しく身じまいすることもなく、異様な様子で、鬱々と引っ込みがちに暮らしている。

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