真木柱 その七

 髭黒の大将の来ない昼頃、光源氏は、玉鬘の部屋を訪ねた。玉鬘はこの日ごろ、ずっとどうしたことか、加減が悪そうにばかりしていて、気分の爽やかなときもほとんどなく、しおれているのだった。


 そこへ光源氏が見えたので、少し起き上がって、それでも几帳の陰に隠れるようにしている。


 光源氏も、改まった顔つきで、やや他人行儀な態度を取って、さりげない世間話などをした。


 玉鬘はこの頃、生真面目なばかりで面白みのない、平凡な夫の様子を見慣れているものだから、なおさら今では言いようもなく魅力のある光源氏の様子や姿が、改めてよくわかるのだった。それにつけても、思いもかけず髭黒の大将のような夫を持った自分が、身の置き所もないほど恥ずかしいのにも、涙がこぼれるのだった。

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