真木柱 その六
玉鬘は、快活で明るく、いつも陽気にしている性分だが、今ではそれを抑えて、すっかり思いつめてふさぎ込んでいる。髭黒の大将とこんなことになったのは、自分から進んでのことではないと、誰の目にもはっきりしていることなのだが、光源氏がどう思っているかとか、蛍兵部卿の宮の気持ちが思いやり深く、情愛がこまやかでやさしかったことなどを思い出すにつけても、ただもう恥ずかしく、情けなく感じて、何とも面白くない顔つきをしている。
人々が玉鬘に同情していた、あの自身に疑いをかけられて困った件では、光源氏も潔白であったことを明らかにしたので、気まぐれな出来心の曲がった恋などは自分でも好まなかったのだと昔からのことも思い出す。紫の上にも、
「あなたも疑っておいででしたね」
などと言うのだった。
今さら、障害のある面倒な恋に惹かれがちな自分の性癖が出てもと思いながらも、一時は恋心を抑えかねて苦しかったとき、思い切って我が物にしようかという気持ちになったくらいなのだから、やはり今でも心の底ではきっぱりと断念してはいない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます