藤袴 その十八
柏木の中将は、
「気分がお悪いとおっしゃるその几帳の側まで、お通しできないでしょうか。いやいや、もう結構です。こんなことを申し上げるのも確かに気の利かないことでした」
と言って、内大臣の伝言の数々を、声をひそめて言う態度などは、誰にも劣らずとても好ましい感じだった。
「参内なさいます折の都合の詳しいことなども、まだ何もお伺いできずにおりますが、内々で相談くださればいいと思います。何事も人目を遠慮して、こちらへも参上できず、お話もできないのを、父君は今となってはかえって気掛かりに思っていらっしゃいます」
など、お話になるついでに、
「いやもう、私も馬鹿げたお手紙は、さし上げられなくなりました。しかしどちらにしても、私の深い真情をあくまでも知らないふりをなさる法はなかったのにと、ますます恨めしさがつのってまいります。何よりもまず、今夜のこんな扱いは、何ということでしょう。北面のもっと内々のお部屋にでもお通しいただいて、あなた方女房たちはお嫌いになるでしょうが、せめて下仕えといった人々とでも、親しくお話がしたいものです。こんな冷たいお扱いはまたとはないでしょう。それにしても私たちはいろいろと何かにつけ珍しい間柄ですね」
と首を傾げながら恨み言を続ける。その態度が宰相の君には感じよく好感が持てたので、そのまま玉鬘に取り次ぐのだった。
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