藤袴 その十七

 柏木の中将が、



「父が私を使いに選んで寄こしましたのは、人伝ではなく直接にお話申し上げよという大切な伝言だからなのです。こんなに隔たっていては、どうして申し上げられましょう。私自身は数ならぬ者ですが、姉弟の縁は切っても切れないと言うではありませんか。それなのにこれはまたどういうことでしょうか。古風な言い草ですが、姉弟だから頼もしく存じ上げておりましたのに」



 と言って、玉鬘の態度を不服に思っていた。玉鬘は、



「ほんとうにこの年頃の積もる話なども、いろいろと申し上げたいのですけれど、このところ、妙に気分がすぐれませんので、起き上がることもできずにおります。それをそんなふうにお咎めになるのは、かえって親身の情愛がおありとも思われません」



 と、とても生真面目に答えるのだった。

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