行幸 その三十七
内大臣ははじめはそれほど乗り気ではなかったのに、あまりに思いがけない話を聞いてからは、玉鬘に早く会いたいとずっと心にかかっていたので、その日は早めに六条の院に出かけていった。
裳着の式の支度など、しきたり以上に目新しいようにしている。いかにも光源氏が格別心を込めて用意した立派な儀式だと、内大臣は見るのだった。もったいないことだと思うものの、何かこの心尽くしを異様なふうに感じるようでもあった。
その夜の十時ごろ、内大臣を御簾の中に入れた。型通りの儀式の飾りつけはもとより、御簾の座席も、またとなく立派に整えてあり、酒肴をさし上げる。燈火も慣例よりは少し明るくして、顔が見えるように、気を利かせたおもてなしをするのだった。
内大臣は玉鬘の顔を見たいと思うが、今夜すぐではあまりにも性急なようなので、裳の紐を結ぶ間も、こらえきれないような様子だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます