野分 その二十六

 様々な布地の色が、とてもきれいなのを見て、



「どういうものに仕立てあげられるだろう。こうした染色や裁縫といった面では、花散里は、紫の上にも引けをとらないだろう」



 と思う。


 光源氏の召料としての直衣は、花模様を織り出した綾を、この頃摘み取ってきた花で、薄く染めだしている。それがほんとうに申し分ない色合いだ。



「私よりも夕霧にこそこんなふうに染めてお着せになるのがいいでしょう。この二藍は若い人の色にふさわしいようです」



 などと言って、引き上げていったのだった。

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