野分 その十二

 花散里は昨夜の強風にすっかり脅えきって、疲れ果てていたのを、何とか慰めた。人を呼び、風に傷んだそこここを、修理するように指図してから、南の御殿に参上した。


 こちらではまだ格子も上げていない。夕霧が紫の上の寝所のあたりの、ちょうど前の高欄に寄り掛かって庭を見渡すと、築山の木々も風が吹き倒して、枝がたくさん折れ伏している。草むらの荒れた状態は言うまでもなく、屋根の葺いた檜皮や、棟瓦、あちらこちらの立蔀、透垣などのようなものがおびただしく散乱している。


 日の光がわずかに射し始めると、嵐のあとも心細そうに見える、庭の露はきらきらと光り、空にはひどくもの淋しく感じられる霧が立ち込めている。


 夕霧はその景色に感傷的になって、なぜともなく涙が落ちるのをおし拭い隠して、咳払いをした。



「夕霧がきて合図をしているようだね。まだ朝には遠いだろうに」



 といって、光源氏が起きた様子だった。

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