篝火 その六

「夕霧の中将が、例のいつもの連中と遊んでいるらしい。あの笛は柏木の頭の中将に違いない。こちらに聞かせたいのだろう。うまいものだ、ほんとうにすばらしい音色じゃないか」



 と言い、立ち止まった。


 使いをやり、



「今、こちらにいます。とても涼しい篝火の火影に引き留められてしまって」



 と誘うと、連れたって三人でこちらにやってきた。



「秋風楽の笛の音が、秋になったと聞こえてきたので、このままではすまされなくなって」



 と、光源氏は和琴を取り出して、心が惹きこまれるようにやさしく弾いた。夕霧は盤渉調で実に愉しく笛を吹いた。


 柏木の頭の中将は、玉鬘に心惹かれているので気もそぞろで、謡い出しにくそうにぐずぐずしているのだった。

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