常夏 その三十
「まあなんてうれしいことでしょう。ただ、何としてでもぜひぜひ、皆さまから人並みにお認めいただけますようにと、寝ても覚めてもそのことばかり願って、長年他のことは一切考えませんでした。宮仕えのお許しさえいただければ、水を汲み、頭に載せて運ぶこともいとわずにお仕えいたしましょう」
と、すっかり上機嫌になり、もっと早口でしゃべりだすので、内大臣はこれだけ言っても無駄だったとがっかりして、
「なにも、そんなにわざわざ薪を拾うようなことまでなさらないでも、弘徽殿の女御のところに参上なさればいいでしょう。ただ、あなたが、あやかりものにして早口になったという坊さんさえ遠ざけていればね」
と、冗談のようにからかうのさえ、近江の君は気づかない。また同じ大臣と呼ばれる方々の中でも、この内大臣が特別容貌も綺麗で威風堂々と、きらびやかな様子をして、普通の人にはお目通りも憚られるような人なのも一向にわからず、近江の君は、
「ところで、いつ、弘徽殿の女御さまのところには参上いたしましょう」
と言うのだった。
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