常夏 その二十

 そんなふうで内大臣はあれこれ思案するうちに、ふと気が向いて、雲居の雁の部屋にやってきた。弁の少将もお供している。


 雲居の雁はたまたま昼寝をしているところだった。羅の単衣を着て横になっていた様子が、涼しそうで、ほんとうに可愛らしく、華奢に見える。羅の着物から透けて見える肌の色艶などもとても美しい。いかにも愛らしい手つきで扇を持ったまま、肘を枕にして、投げ出されたように広がった髪が、そう長くて多すぎるというほどではないが、その裾の広がりにとりわけ風情があった。


 女房たちも、几帳や屏風の陰にそれぞれ横になって休んでいたので、雲居の雁はすぐに目覚めない。


 内大臣が扇を鳴らすと、雲居の雁は目覚めて、無心に見上げた目元がいじらしくて、ほほが赤らんでいるのが、親の目にはたまらなく美しく見えたのだった。

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