胡蝶 その九
今日は秋好む中宮の春の読経の初日だった。人々はそのまま退出せず、休み所を拝借して、昼の装束の束帯を替える人々が多かった。ただしさしつかえのある人は退出などする。昼頃には皆、西南の町の秋好む中宮の御殿に向かった。光源氏をはじめ読経の座に皆ずらりと着いた。殿上人なども、残らず来た。すべては、光源氏の威勢のおかげで、尊く荘厳な法会が営まれた。
紫の上から供養として、御仏に花を供えた。鳥と蝶の衣裳の二組に分けた女童八人、顔の美しい子を特に選び、鳥になった女童には、銀の花瓶に桜をさしたのを、蝶になった女童には、金の花瓶に山吹をさしたものを持たせた。同じ花でも花房も見事な、またとなく色鮮やかなものばかりを使った。
南の町の紫の上の御殿の築山のところから漕ぎ出して、中宮の御殿の前の庭にさしかかったころに、春風が吹いて瓶の桜が少しはらはらと舞い散った。空はうららかに晴れて、春霞のたなびく間から、鳥や蝶の女童たちの一行があらわれたのは、言いようもなく風情のある優美な眺めだった。
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