胡蝶 その七
こうしてその夜も明けた。朝ぼらけの鳥の囀る声を、秋好む中宮は築山を隔てて妬ましく聞くのだった。
この紫の上の御殿は、いつも春の陽光をたたえているが、恋心を寄せたいような若い姫君がいないのを、物足りないと思う人々もいた。そこへ、玉鬘があらわれ、非の打ちどころのない器量のことや、光源氏もことのほか大切にしている様子などが、すっかり世間に聞こえてきたので、光源氏の思惑通り、玉鬘に恋心を燃やす殿方も多いようだった。自分こそは玉鬘の相手にふさわしいと自認しているような身分の人は、六条の院の女房たちにつてを求めて、意中をそれとなく手紙で伝えたり、またそれを口に出して言い寄る人もいたが、そうすることもできず、ただ心の中に恋の炎を燃やして、恋焦がれている若君たちなどもいることだろう。
その中に、実の姉という真相も知らずに、頭中将の長男である柏木の中将などは、恋してしまっているようだった。
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