初音 その十六



 新年の忙しい数日が過ぎてから、光源氏はようやく二条の東の院に来た。末摘花は、何といっても身分が身分なので、気の毒に思って人目につく点は立派に見えるよう、十分丁重な扱いをした。昔は見事と思われた若盛りの黒髪も、年とともに薄くなっていて、今ではその上に、滝も流れも恥じ入るほどの白髪になった横顔など、可哀そうに思ってまともに見ることもない。暮の贈り物のあの柳襲の織物の袿は、いかにも似合わなかったと思われるのも、着た人の人柄によるのだろう。

 艶のない黒っぽい練り絹のさわさわと音をたてるほど強張った一襲の上に、こうした織物の袿を着ているのは、ひどく寒そうでいたわしく見える。下の襲の袿などはどうしたのだろう。着ていなかった。

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