玉鬘 その六十八
誰からもお礼のあいさつは一通りではなく、お使いたちへのねぎらいの品もそれぞれの気遣いが行き届いている中に、末摘花は二条の院に住んでいるので、六条の院の人々よりも少し差し控えて、しゃれた趣向があってもいいところなのに、何事も几帳面な性格から、作法通りのことは手を抜かないで、山吹襲の袿の、袖口がひどくすすけたのに、下襲も添えず、使者への引き出物として与えた。光源氏への手紙は、香を強く薫きしめたごわごわした陸奥紙の、年数が経って黄ばんできているのに書いてあった。
「さてさて、今更晴れ着を頂戴いたしましたのは、かえって恨めしく存じられまして」
きてみればうらみられけり唐衣
返しやりてむ袖を濡らして
筆跡は、とりわけ古風だった。光源氏は、こらえきれないようににやにやして、その手紙をすぐには手から放さない。紫の上はどうしたのかと、こちらをうかがっている。お使いへの心づけが、あまりにみすぼらしく不体裁なと思い、光源氏の機嫌が悪いので、お使いはそそくさと退出した。女房たちもその引き出物に皆こらえきれずおかしがって、ささやきあって笑うのだった。
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