玉鬘 その六十四

 年の暮れには、玉鬘の部屋の、正月の飾りつけや、女房たちの晴れ着などまで、光源氏はほかの高貴な方々と同列にしてあげた。玉鬘の容貌は思いのほかに美しくて、趣味などは、やはり田舎臭くて垢ぬけしないのではないかと想像される。何と言っても田舎育ちのことだからと見くびられて、光源氏はこちらで仕立ててあった衣裳も一緒に、玉鬘にあげたのだった。そのついでに、織物の職人たちが、我も我もと、技巧をこらして織りあげて持参した細長や小袿の、色とりどりのを見て、



「ずいぶんたくさんあるものだね。その方々にも恨みっこなしに公平に分けなければね」



 と、紫の上に相談すると、紫の上は、御匣殿で仕立てたものも、こちらで作ったものも、みんな取り出した。紫の上は、染色や裁縫などもまた、とても上手で、またとない色合いや、ぼかしなどを染めるので、こんな人はこの世に得難い珍しい人だと光源氏は感じ入っているのだった。

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